−良い仕事って、やっぱりそれにまつわる議論や会話の量や質が多かったり深かったりすると思うんですね。で、良い仕事、やっぱりしたいじゃないですか。
🏃🏻♂️ですね。成果とその過程、そのどちらかだけが良い状態ってあんまりないですからね。過程そのものも豊かにしていきたいですよね。
−はい。なので、この「読み物」では、株式会社大凧というものが、何に着眼して何をしようとしているのか?というところを、インタビュー形式でドキュメント化していくことで、その議論や会話の種にしていきたいんですね。実際にリアルで会ったときに、あーだこーだと豊かな議論や考察を交わし合えるプロジェクトって素敵だと思います。とはいえ、大凧って、すごいいろんなことをやっている会社ですよね?ちょっと捉えどころがないような気もします。
🏃🏻♂️あははは。地域の課題って、いろいろと入り組んでいますからね。そのために必要なことをやろうとすると、「あるべき姿」を考えながら、それを実現するために手も足も使って、いろいろと柔軟に動いていく必要が出てくるんです。それに、その「あるべき姿」を考えることも、実現に向けて動くことも、その地域の方々と一緒に、というところを大切にしたいんです。となると、なんだか自ずといろんなことをやることになるんです。
−吉田さんって、MBAも持っているし、植栽管理も自分でされていたし、キャリアがユニークですけども、それらの経験や知見をもとに、仕事に向かっているという感じなんですよね。これは偏見でもあるんですが、MBA資格者って「Think」というところがあっても、なかなか「Do」が伴わないイメージがあります。でも、吉田さんは、そのDoも徹底するという。ユニークなんだけど、そこに必然性があったわけですよね。
−やっぱり、これまでのキャリアの中でターニングポイントのようなものがあったんですかね?
🏃🏻♂️2001年に東邦レオという会社に入社して、都市開発に携わり緑を増やす仕事をしてきたんですけど、自分が携わった緑の大半が数年後に荒れている事にショックを受けたんですよ。
−ただ緑を増やすだけでは、ダメだと。
🏃🏻♂️そうなんですよね。「良い緑は、人の良い縁の中にある」と気づくことができて、2012年に集合住宅で、植栽管理と住民同士のコミュニティ形成を実現するクリエイティブグリーン事業を立上げ、自分自身も千葉県市川市にある築40年の「ハイタウン塩浜」で暮らし始めたんです。
−自分自身も全人格を注いで、事業開発していくスタイルがスゴいですよね。
🏃🏻♂️外の存在でしかわからないこともあるかと思いますが、やっぱり中の存在でしかできないこともあるんで。それで、全国で150のマンション管理組合との取り組みの中から、自治運営や高経年団地の課題に気づいて、2018年から団地再生事業に取り組み始めて、その「ハイタウン塩浜」の商店街に「みどりTOゆかり」という多世代交流拠点のカフェを創り、運営を始めました。
−まさに、植物の緑(みどり)と人との関係である縁(ゆかり)を一緒に育んでいくスタンスが、名前になっているという。
🏃🏻♂️そうですそうです。それで、全国のエリアマネジメント拠点の立上げに携わりながら、2019年から福岡県宗像市にある日の里団地の再生事業に取り組むことになったんです。
−日の里団地のプロジェクトは、大規模なものだったというのもありますが、居室をリノベーションして、コミュニティカフェやクラフトビールの醸造所、DIY工房や保育園、発達支援活動の拠点として利用されていたりと、そのユニークな内容や手法からも、かなり注目されましたよね。テレビや新聞等のメディアにも多く取り上げられていたので、概要情報はそちらに譲るとして、ここでは、そこにあった吉田さんのマインドセットというか、プロジェクトのキーポイントのようなものに迫りたいんですが。
🏃🏻♂️事業性だけ考えれば、最も効率がいいのは、一社のハウスメーカーが開発を担って、区画を分けて分譲してしまうことです。ただ一社が担うにはエリアが広かったのと、宗像市の意向としても、ただ土地の切り売りをしてしまっては未来のまちの姿が見えないという懸念から、これまでとは違う開発の形を模索したいという考えがありました。
−64戸のプロジェクトにたくさんの会社が関わってますよね。住友林業をはじめとするハウスメーカー8社、それに西部ガスと東邦レオの計10社という。
🏃🏻♂️とにかく話し合って意見を調整しているので、手間がかかることこの上ないんです。ハウスメーカーさんとしては予想外だったはずです。でも、ただのハードの開発だけでは、10年、20年経過する度に価値が損なわれていくだけ。それよりも、そこに暮らす人が主体的にまちづくり、団地づくりに加わることを前提とした開発にしたかったんです。
−経年劣化ではなく経年優化していくための、基礎のところですよね。その意味でも、開発の機会を、学びの機会に重ねていきましたね。
🏃🏻♂️ああ、地域の学校と連携して総合学習の時間を頂いて、プロジェクトのメンバーで授業をしましたよね。地域づくりに地域の当事者の方々が参加するということは、そうだとして、、、大人が楽しみながら活動をしていくことも大切ですし、同時に子どもたちにも、自分たちの街の変化の原因になっていくことを体感してもらいたいんですよね。
−街の開発というか、団地再生のプロジェクトの一環として、学校で授業をするというのは、意外なようでもありつつ、やっぱりそこに必然性もあったということですよね。
🏃🏻♂️開発のタイミングでしか実現できない学びの機会もありますしね。それに、そもそも子ども達が自分の地元を、なにか事を起こせる場所ってあまり思えてないようにも感じたんですよね。
−それは、どこの街もそうでしょうね。自分たちが街の変化の原因になれるという感覚は、まあ普通はなかなかないですよね。
🏃🏻♂️ですよね。だから、「早起きが得意」「街の猫に詳しい」とか、一見些細なように扱われてしまうことも「ひっさつわざ」として、個々のキャラクターや可能性と感じてもらえるようにしていました。仮に「早起きが苦手」だとしても、捉え方によっては「ぐっすり寝るのが得意」とも言えますから、決まりきった価値観のなかで萎縮してしまうよりも、その価値観そのものを自分で更新していけるような時間になったらいいなと思っていました。
−吉田さん、自分のことも例に挙げて「しつこくて諦めが悪いって、子どものときに言われていたけど、いまではそれが仕事で活かされている」みたいな話もされていましたよね。学校だとどうしても、勉強ができるとか、スポーツが得意とか、評価されるポイントが限定になりがちですけども、そうやって豊かな評価観が育めたら、ほんといいと思います。
🏃🏻♂️その上で、「この街でどんなことをしていきたいか」と尋ねていくと、自分自身を街のために活かしていきたくなるし、逆に街を自分自身のためにも活かしてみたくもなるわけです。
−いろんなアイディアが出ましたね。そのなかのひとつが「団地の壁を登りたい」というもの。それが実際にボルダリングの壁として、実現されてしまうという。
🏃🏻♂️実現しちゃいましたね。
−自分たちのアイディアで、街に変化をもたらすことができるという経験は、ものすごい大きなインパクトを残したのだと思います。前例がないことですから、実現の際にはいろんなことがあったかと思いますが、なにより、子どもも大人も嬉しそうでした。
−で、話をスキップして進めると、そこから会社から独立されて、「大凧」を立ち上げる、と。
🏃🏻♂️ですです。
−今現在、どんなプロジェクトを展開しているのか?であるとか、そこではどのようなキーワードがあるのか?というところは、リンク先をご覧いただくとして、、、ここでは、吉田さんの仕事に向かうスタイルのようなものに迫りたいんですね。
🏃🏻♂️どう見えています?
−えっと、「目的の達成のために人がいる」というものと、「人との関係性から目的を考える」というものがあると考えているんですね。で、極論的に言ってしまえば、テーマと人のどちらかを重要視するのか?というところなんですが、そこには仕事に向かうスタイルとしての分かれ目があると思うんですね。
🏃🏻♂️目的のための手段として人がいるのか、人そのものが目的になるのか、というところですかね。
−極端にいうと、そういうニュアンスですね。で、それがどちらかというわけではなく、スタート時点では人との関係性のなかから目的を生んで、ある程度目的がクリアになってきたら、それに向かって手段を選ばずにというと語弊がありますが、やれるだけのことをやり抜くというか。もちろん目的に適した体制の必然性もあるにはありましょうが、ただ、「良い緑は、人の良い縁の中にある」という話もあがりましたが、それはグリーンの話だけねなく「良い仕事」というものにもあてはまるというか、とにかく関係性が先立って、それを大切にしたいという感じですかね。
🏃🏻♂️ああ、やっぱり人の想いみたいなものは、エネルギーになりますよね。起点となるのは、そのような想いの部分ですよね。大凧では、宗像市の大島に拠点を設けていきますが、まさに頂いているご縁を大切にして、それを積み重ねていきたいんです。凧って、紐がないと飛べないじゃないですが、その紐となるのがご縁みたいなもので、そして、逆風があればあるほど高く飛ぶという。
−紐が切れてしまったらどこに飛んでいくかわかりませんしね。そこも含めて吉田さんぽいというか。
🏃🏻♂️(笑)。
−地域ごとって、やっぱり「そこにいる人たち同士」がなにかを成し遂げていくことだと思うんですよね。その意味では、目的のために人を取り替えしまくるグローバル企業のような仕事スタイルじゃないものが求められているように思うんです。なので、人、地域の風土、そういった「かけがえのなさ」を意味や価値に変えていく仕事は、固有性があるからこそ、かえっていろんな地域の参考になっていくような気もしています。
🏃🏻♂️良い事例が生まれると、それを真似したものがたくさんうまれていくじゃないですか。でも、うわべだけトレースしても続かないし、そもそも良いものにならない。でも、うわべの部分のほうがコピーしやすいんですよね。その真似し辛い部分にこそ、本来的な意味や価値が宿るので、そういう地域づくりをひろげていきたいです。
−ひろげていきたいというところでは、嫌味じゃなく言うんですが、MBA資格保持者だけあって、地域経営という視点で各プロジェクトにおいてものすごいリサーチをたくさんされるじゃないですか。
🏃🏻♂️癖ですね(笑)。ですし、徹底的に知りたくなっちゃうんですよね。
−あ、で、良い事例をつくるだけでももちろん素晴らしいものだと思うんですが、その事例の普及とかスケーリングといった視点も当初からある程度は織り込んでいるじゃないですか。もう少し具体的にいうと、社会制度や慣習上のボトルネックのようなものを見据えようとしている。そういう仕組の話に落とし込めていけるのであれば、それが故に、オセロのように一気に潮目が変わるというか、ひろがっていくための梃子にもなるんですよね。吉田さんって、現場でからだはってるたいなところがあるんだけど、結構、仕組み化の部分というか、すごい上流のところを意識しているというか、まあ、MBAを取得しただけあって経営学というか・・・。
🏃🏻♂️(笑)。そもそも経営とかっていうとイメージがクールな感じかもしれませんが、経済という言葉のもとになった「経世済民」という言葉は、「世の中を治めて民を救う」という意味ですからね。本来は、みんなのための世の中の仕組みづくりみたいなところがあるんですよね。
−それはホントそうですね。今、仕組み的な観点でいうと、気になっているポイントってありますか?
🏃🏻♂️うーんと、いろいろとあるんですけど、例えば植栽管理関係でいくと、地域における公園の維持管理のあり方ですね。団地の再生というものが、その地域の教育や振興の拠点にもなりえたように、公園もその地域の振興や自治のための良いフィールドになるかと思うんですが、なかなか制度設計というか仕組みや地域の人材育成が追いついていかない。
−気になります。
🏃🏻♂️例えば、現在、国定公園や県立公園といった大きな公園となると、全国展開している大手造園業者が元請けで受託し、地場の造園業者を下請けにする形でオペレーションを回すという形がほとんどです。地方主権だったり、自律分散社会といったものを理想として実現していくには、こういった発注形態そのものも変えていく必要があると思っているんです。
−地場のプレイヤーがもっと活躍したり成長したりする機会にしていけるし、それこそが地域の主権を育てていく機会にもなるということですかね。
🏃🏻♂️そうです。そのための公民連携やまちづくりにつなげるためのみどり作りの取り組みを、その実現の第一歩にしたいと考えています。各地域で意欲のある地場造園業者やNPOとパートナーシップを組んで、公民連携の仕組みや実務面での協業を行い、売上増加や新規事業開発等、成長の喜びを共有できる形をつくっていきたんですよね。そういった方法論は、国定公園や県立公園といった大きな公園だけじゃなくて、都心部の小規模公園も維持管理が難しくなってきているなかで、役立てていける気がしています。
−発注形態を変えていきながら、そういった仕事の地元側の受け皿を整えていくということと、そこで働いていく人や組織がどんどん成長していけるような状況が望ましいと。
🏃🏻♂️ですね。今、日本は課題が山積していると言いますが、裏をかえせば、どんどん若い方も含めてみんなでチャレンジしていくべき、やりがいのある時代だってことですよね。仕組みとともにそういう気運をつくっていきたいですよね。やっぱり最終的には、「人」ですからね。地域で、人がイキイキとできる状況をどうやってつくっていけるかですよね。でも、本来、みんなそうありたいはずですから、あとは、そういう人たちにどうやって、託したり応援したりができるか、というところだと思います。